長い間、日本における地方観光(いわゆる「グリーン・ツーリズム」)は、ニッチなセグメントとして分類されてきました。歴史的には、ノスタルジーを求めるリタイア層や、伝統的な農村文化に興味を持つ一部の「スロー・トラベル」愛好家のためのものというイメージが強かったのです。*1
しかし、関西国際空港(KIX)での最新調査データを年齢と性別で分析すると、全く異なるストーリーが見えてきました。日本の地方は、次世代の外国人旅行者にとって、公式に「メインストリーム(主流)」へと昇格したのです。
データから明らかになったのは、「若年層の支持」と「女性主導」という2つの大きな特徴です。
- 若年層の支持: 25〜34歳の旅行者の45%が、都市部よりも地方を明確に好むと回答。
- 女性が牽引: ウェルネス、伝統工芸、そして自然を中心とした体験を求めて、女性たちが地方への訪問をリードしています。
「ニッチ」から「メインストリーム」へ。かつてのシニア層にとっての「ついで(サイドトリップ)」は、若者にとっての「旅の目的」へと変わりました。25〜34歳の層にとって、旅行は有名なランドマークを制覇することではなく、「個人的な発見」をすることです。SNSにあふれている情報とは違う、自分だけの「特別な体験」ができる地方は、彼らにとって最高の舞台なのです。
さらに、地方を訪れる旅行客に女性が多いという事実は、今後の観光地には「安全性」「美意識」「洗練された文化的体験」が不可欠であることを示唆しています。

業界にとっての意義: 「地方」はもはや日本旅行の脇役ではありません。立派なメイン・ディスティネーションです。この成長セグメントを捉えるために、ブランドや地域は以下の3点に注力すべきです:
- キュレーション: 独自のストーリー、現地の職人、季節の瞬間を魅力的に示し、見せる。
- サステナビリティ: 地域への貢献を重視する若い旅行者の価値観に寄り添う。
- ウェルネス: 地方を「心身を回復させる場所」としてポジショニングする。
なぜ25〜34歳の層が、これほどまでに日本の地方に惹かれているのでしょうか?自然の「映え」を求めているのか、それともさらに深い「意味」を求めているのでしょうか?
本記事は、2025年9月に関西国際空港にて実施された「訪日観光客調査:日本におけるAIへのニーズと期待」(有効回答数:訪日外国人273名、実施:株式会社アーティーズ)の結果に基づいています。
*1 出典:Chen, B., et al. (2018). Tourism’s Impacts on Rural Livelihood in the Sustainability of an Aging Community in Japan. Sustainability. https://doi.org/10.3390/su10082896
